Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2019年10/1号[2020サバイバル日本戦略]

他にも面白い記事はあるのだが、特集の「外交日本が世界で生き残るために」に集中してレビューを書いていきたいと思う。日本を含めて、アメリカ、欧州、ロシア、中国、韓国・北朝鮮と、個別に様々なコラムニストたちが各々の現状認識・これからの展望を綴っている。アメリカについては、恐らくトランプ大統領の再選はあり得ないという見方には同意する。日米関係に関しては、日本に当たりの強いトランプに対して、日本の自立外交の可能性も模索されてはいるが、望みは薄いのでは。最近の日米貿易協定でも、日本はアメリカに思い切り譲歩しており、これだけを見てもどう考えても対等の関係ではあり得ない。安倍外交が「盤石」なんてよく書けるな。ヨーロッパについては「第2のトランプ」こと、ボリス・ジョンソンをはじめとしたポピュリズム勢力の台頭くらいで、大したことは書かれていない。いかんせん日本は欧州からは遠い。中国について。中国はアメリカとの関係が悪化しており、日本と関係を改善してアメリカに対抗しているという。中国の「一帯一路構想」に日本も全面的にではないにせよ賛同しているなど、日中関係の改善が見られるのは安倍外交の数少ない功績だろう。この構想に裏があるにせよ、同じアジアの国として、関係を強化するのは必然。日本では、「中国脅威論」が盛んに喧伝されている。日本、特に沖縄に中国軍が攻めてくるぞ、などと主張する人もいる。この種の主張は以前からあったが、未だに中国軍は攻めてこない。一体いつになったら来るんだろうか？100年後か、200年後か？ロシアについて。何かロシアを大した事のない国のように描いているが、北方領土問題も解決できず、平和条約も締結できない安倍外交を擁護しているようにしか見えない。日本は、アメリカのみならず、ロシアの言いなりでもあるようだ。韓国・北朝鮮について。南北統一が実現するかどうかは図り難いものの、もし実現したならば、日本は朝鮮と友好関係を維持すべきとのこと。同感である。ただし、力の均衡（バランス・オブ・パワー）を図れる程、安倍外交に期待は出来ないが。相手は核を持っているが、日本もこれに応じて核武装する、という展開にはならないだろう。国民のコンセンサスが得られないだけではなく、コストの問題、日本の今までの核兵器反対運動の経緯を考えれば、核武装など出来る筈もない。また、相互に核武装していても抑止力が働かないという主張も最近挙がってきており、日本に出来るのは核武装ではなく、対話を主体とした協調外交しかないのではないだろうか。安倍外交の評価にやや甘い所があったので、星3つの評価にする。