ああ玉杯に花うけて (少年倶楽部文庫)

月刊誌『少年倶楽部』に昭和2年〜3年の間、連載されていた小説。この昭和50年（1975）復刻版は、誤植が目立つが、内容を損なうものではない。主人公は、成績優秀ながら貧しさゆえに中学へ進学できない豆腐屋の小僧である。昭和初期の日本の雰囲気を知るのにはもってこいの、名作児童文学。歴史には残らない、日本を支えてきた無名の人々が、どのような心構えで刻苦勉励していたのか。全世界的に、高等学問機関が、単なる身分制度メーカーにまで堕落してしまった21世紀の今日、学ぶことによる人への恩返しをもう一度思い出すために、この物語を読む。正しい生き方は、つらい上に報われない。しかし、だからと言って、気高さを捨て、萎縮したまま生きることを強いられれば、そこに人間は存在しなくなってしまう。他所の経済的貧困を嘲笑うより先に、己の精神的貧困を恥じろ。これが、この作品のメッセージなのだと感じた。駄文長文失礼しました。